<一章/誇りを継ぐ者>




序.



あの日の紅を、生涯忘れないだろう。

すべてが崩壊した日。

自分の目の前で二人は死んでいった……。



「とうさま?……かあさま?」

豪華な部屋の扉のむこうには、いつも見慣れた穏やかな微笑みが待っている筈だった。
だが、幼いリーシェが扉の先で見たものは―――

紅。

一面のくれないの海、だった。

驚愕のまなざしで、虚空を見つめたまま時が止まった二人。
胸が、手が、血にまみれて紅く濡れている。
お茶の時間を楽しんでいただろうことが推測される割れた茶器が、床に転がって染みをつくっていた。

「あ……」

かすれた声が部屋に響く。
何が、おきた?
誰が、こんなことを?
何故、二人が殺されなければならない?
何故、冷たい床に転がっていなければならない?
何故、
何故、
なぜ―――――

「―――――――っ!!」

叫んだ。
あまりにも無残な両親の死に、こころが、凍りついた。
思考は意味をなさず、ただ、獣のように叫んだ。



瞬間。
その声に驚いたかのように部屋の中でびくりと動くものがあった。

「………?」

ゆっくりと、首をめぐらせて振り返る。
そして――――



NovelNext








55 STREET / 0574 W.S.R / STRAWBERRY7 / アレコレネット / モノショップ / ミツケルドット