時忘れの花
1.prayer
ただ、そこに笑いがあればよかった。
ささやかな笑みを交わせるだけで。
誓いをくれた、あの夜。
嬉しかったよ。
ほんとうに、とても嬉しかったんだ。
幸せだと、思えた。
けれど…それは、儚い夢でしかなかったんだ。
光を見た瞬間、押し込めていた望郷の念を思い出した。
還りたかったんだ、とようやく気付いた。
残してゆくおまえだけがただ心残りだけれど。
その想いと、おまえの花を共に連れてゆくから許しておくれ。
ありがとう。
ほんとうに、ありがとう…。
おまえの幸せだけを祈っている。
その紫に笑みを。
幸せになれ。
幸せになれ。
幸せになれ。
……大好きだったよ。おまえのことが……――
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